BLOG

ブログ記事詳細

【環境問題と獣医師】社会問題と向き合う。食品ロスは動物の為に変換可能な資源となるか

2022.04.06

どうもみなさん初めまして!獣医師の佐藤龍之介です。

今回は株式会社and Vetと、ワンちゃん用 の馬肉フードの開発に携わりました。
この記事では、馬肉フードがいったいどういうものなのかどういうコンセプトのもと生まれた のか、そして獣医師として今回のプロジェクトに関わって得られたことについて書いていこうと 思います。

馬肉フードにどのようなメリットがあるのか知りたい人、そして獣医師として新し い分野を開拓したい人、株式会社and Vetがどのような活動をしているのか、そしてどのように社会に貢献しているのか知りたい人たちにとって、とても有用なものとなっています。
ぜひ最後まで見ていってください。

目次

ワンちゃん用フード開発の背景とは?
馬肉フードのメリットとは?
 1.アレルギーになりにくく安心
 2.生食しても寄生虫や細菌の心配がない
 3.タンパク質が豊富で、美容や健康面でのメリットが大きい
 4.ダイエット効果が望める
 5.良質な脂質(油)を摂取できる
 6.そのほかにも体に良い栄養素がたくさん!
 7.添加物がなく馬肉100%なので、人でも食べられて安心!
今回のお仕事を通して


ワンちゃん用フード開発の背景とは?

まずはどうして馬肉にスポットをあててフードを開発することになったのでしょうか。
この商品のコンセプトとして、Evolutionary dietというものがあります。
犬の祖先である狼は、草食動物を生のまま丸ごと食べることで栄養を摂取していました。犬や祖 先の狼が野生だった頃に食べていた生食を模した食餌、進化に基づいた食餌のことを Evolutionary dietというのです。そしてそれを実践することで、健康を取り戻し、老化を遅らせ ることができると言われています。
この考え方は、オーストラリアの獣医師である、イアン・ビリングハースト氏が、著書の「give Your Dog a Bone」で発表しています。
またフードロスという問題にも一役買っているプロジェクトになります。
そもそもフードロスという言葉はどういう意味なのでしょうか。まあ普通に中学英語を習った人 ならばなんとなく意味はわかると思います。

本来食べられる食品が廃棄されてしまうことを食品ロスといいます。この言葉が生まれたのが 2018年くらいで、それがここ最近ではフードロスという言葉に置き換わったようです。 日本では生産から流通、そして消費者に届くまでの一連の流れにおいて、食品が食べ残されたり 廃棄されることを食品ロス、ないしはフードロスと呼んでいます。
いまだに世間を騒がせているコロナウイルス感染症の影響もあり、様々な食べ物が余ってしまう
状況になりました。
そういった”フードロス問題の手助けになる活動をしよう、そしてワンちゃんの健康も向 上させられるようなものを作ろう”ということなんです。
それが今回の馬肉フード開発の大きなテーマとなっているのです。


馬肉フードのメリットとは?

そしてなぜ数あるお肉の中で、今回は”馬肉”に焦点を当ててフードを作ったのか。別にフードロス に目を向けるなら、他のお肉でもいいんじゃないかっと思う人もいることでしょう。
それは馬肉にはさまざまなメリットがあるからなんです。 ということで、そんな馬肉のメリットについていくつか挙げていくことにします。

1.アレルギーになりにくく安心

食品には抗原度と呼ばれるものがあるのをご存知でしょうか?食品にはアレルギーを引き起こし やすいものと起こしにくいものがあり、それを5段階に分けたものが抗原度で、5になるにつれ て、アレルギーを起こしやすくなります。 馬肉はその抗原度が2で、アレルギーを極めて起こしにくいと言えるのです!ちなみに他の代表的 なお肉(牛肉、豚肉、鶏肉)や魚については抗原度は5なので、いかに馬肉がアレルギーを起こ しにくい安全な食品であるかがわかりますね! 参考までに、馬肉と同じ抗原度のお肉として、鹿肉やウサギ肉がありますが、あまり馴染みもあ りませんので、やはりその点で馬肉が優秀であると言えるでしょう。

2.生食しても寄生虫や細菌の心配がない

馬肉を生食しても本当に大丈夫なの?
そう言う疑問を持たれる方もいるかもしれません。豚肉や牛肉や鶏肉の刺身は、特殊な場合を除
いて食べませんよね?

なのに馬肉に関しては、馬刺しが一般的で、みんな普通に生食しています。
なぜそれが可能なのでしょうか? それは馬肉が食中毒のリスクが極めて低いからなのです。細菌を元々保有していないことや、細菌 が増殖しにくい特徴があるので、他の肉と違って生食によるリスクが低いのです。

3.タンパク質が豊富で、美容や健康面でのメリットが大きい

最近、人間にとってのタンパク質の重要性がかなり取り上げられてきています。筋トレ系の YouTuberだったり、芸能人だったり、美容系のインフルエンサー然り、中山きんにくんなどな ど…。 健康や美容、ボディメイクにおいて、タンパク質が必要不可欠な栄養素ということは、多くの人が すでに知っているかもしれませんね。 そしてそれはワンちゃんにおいても同様なのです。ワンちゃんだって生きていく上でタンパク質が 必要です。むしろ人間以上に重要と言っても過言ではありません。
例えば、毛だってタンパク質でできていますから、不足すれば毛艶が悪くなる可能性がありま す。また、筋肉はタンパク質から構成されているので、何歳になっても活動的で元気に動くために タンパク質は不可欠です。
また聞きなれないかもしれませんが、DIT(食事誘発性熱産生)という言葉があります。 これは食物を摂取した際、それが消化吸収される段階で熱が放出されることであり、これは体温 をキープするために使われます。 3大栄養素には、炭水化物、脂質、タンパク質がありますが、それぞれ摂取カロリーの5%、4%、 30%がDITに回されると言われており、タンパク質だけかなりの割合がDITに使われることがわか りますね。 それだけの割合が熱産生に使われるので、食べても体脂肪として蓄積されにくい、つまり太りにく い、ということができるのです。

4.ダイエット効果が望める

馬肉がダイエットに向いているということを聞いたことがある人は多いかもしれません。 どうしてかと言うと、馬肉は高タンパク質で低脂質という特徴があるからです。高タンパク質であ るということは先程のDITの話が大きな要因で、熱産生に回される分食べても太りにくいのです。
また低脂質であるので、余分な脂肪を摂らずに済みます。
こういった面でダイエット効果が期待できるというわけです。
また脂肪燃焼効果があるとされるカルニチンという物質が、豊富に含まれています。このカルニチ ンという物質は牛肉に多いと言われていますが、実は馬肉のカルニチン含有量は牛肉の3倍なので す!

つまり馬肉は低脂質で太りにくいだけでなく、脂肪燃焼効果も期待できると言えるのです!

5.良質な脂質(油)を摂取できる

先程低脂質の話をしたこともあり、脂質といえば、体脂肪の原因だからダイエットの敵!摂取し ない方がいいんじゃない?って思う人もいるかもしれません。確かに脂質は摂りすぎると体脂肪 の原因となり、さまざまな病気の原因になります。
ですが脂質も必要不可欠な栄養素であり、体において重要な役割を果たしています。脂質が問題に なるのは過剰に食べすぎた場合であり、適正量ならむしろメリットがたくさんあります。
そして馬肉にはその中でも良質な脂質が含まれているのです。 それがオメガ3脂肪酸というものです。聞いたことがある人もいるかもしれませんが、この脂肪 酸には様々な効果があります。 例えば血圧を下げたり、動脈硬化の予防、免疫の増強、また炎症を抑える働きなんかもありま す。そして脳にもいい影響を与えることがわかっています。
メリット4で馬肉は低脂肪でダイエット効果が期待できると説明しましたが、馬肉に若干含まれ る脂質もオメガ3と言われる良質な脂肪酸なので、さらに素晴らしい食品であることがわかりま すね!

6.そのほかにも体に良い栄養素がたくさん!

これまで紹介した栄養素以外にも、馬肉には体に良い栄養素がたくさんあります。
馬肉に豊富に含まれている栄養素として代表的なのが、鉄分、ビタミンB群、ビタミンE、亜鉛な どです。 ビタミンB群は疲労軽減効果、動脈硬化の抑制、赤血球の合成、神経機能の正常化などが期待でき ます。 ビタミンEは抗酸化作用があり、いわゆるアンチエイジング効果があります。亜鉛には皮膚の正常 化、免疫機能向上効果が期待できるので、馬肉には様々な効果が期待できそうです!

7.添加物がなく馬肉100%なので、人でも食べられて安心!

今回開発したフードの特徴の一つとして、添加物がなく馬肉100%なので、安心!ということ があります。
普通のペットフードなら、品質向上や嗜好性(好んで食べるかどうか)を上げるために、いろい ろな添加物を入れたりします。それらは特に問題にはなりませんが、やはり飼い主さんとして は、知らないものが入っていると多少なりとも不安になりますよね。

ですが、このフードは馬肉100%で作られており、馬肉の恩恵をダイレクトに受け取ることが でき、安心安全なフードであると言えます。 しかも、馬肉のみなので人間でも食べることができ、そのクオリティはもはや我々が食べるもの と何ら遜色がないほどです。これをヒューマンクオリティといい、今回はそれにもこだわった商 品となっています。
ということで、今回作成した馬肉フードには以上のようなたくさんのメリットがあるわけです!
フードロスの削減に貢献しつつ、ワンちゃんの健康の向上にも役立つ商品が出来上がりました。


今回のお仕事を通して


獣医師としてのスキルを活用の幅が広がった
大学では、獣医療に関する様々なことを学びます。それは直接的な動物の医療に限らず、栄養学 だったり、繁殖、行動学、さらには倫理や法律といったことについても学習します。
とはいえ、実際就職すると、学んだことの大半は活用することなく獣医師として仕事をすること になります。 僕は普段産業動物の獣医師をやっているので、基本的には牛の診療がメインの仕事になります。それ以外の分野に関しては、ほとんど関わる機会はありませ ん。
しかし今回の機会を通して、普段自分がやっていること以外の分野に関わりを持つことができま した。
これは、今までの獣医師業界ではなかったことです。
その分野に正社員として就職するのではなく、業務契約を結び、より柔軟にそして広い範囲で活躍 することができたのです。
今まで学んだことを、ただの知識のストックとして留めておくのではなく、このように社会に還元できたことが大きな経験となり、自信となりました!

また今回株式会社and Vetとの仕事を通して、馬肉フードの開発を1から行い、販売まで辿りつ くことができました。 このような経験は、普通に獣医師をしていたらきっとできない経験だったと思います。
獣医師としてまだまだ未熟な私ですが、これまでの学びや経験などをフルに活用し、そして新し い分野を開拓していく中で、自分の可能性を広げることができました
不安なこともたくさんありましたし、本当に大丈夫なのかと立ち止まることもありま した。 ですが、この会社の方々は全員獣医師なので、困ったときは助けてくれますし、一緒に乗り越えてくれます。なので、一人で全てをやらなくてはならないということではありません。
獣医師として自分の可能性を広げたい!より多様な分野で活躍してみたい!獣医師の新しい在り方を追求してみたい!という方はぜひ一緒に仕事をしてみませんか?
きっと今までとは違った世界の扉が開かれると思います!!


この記事を書いた人
獣医師 佐藤 龍之介(さとう りゅうのすけ)

麻布大学獣医学部卒業
牛の獣医師として働きながら獣医療業界の情報をブログなどで発信

現在世界一周しながら、世界の獣医さんの仕事について日本人に発信中
株式会社 and Vet所属獣医師として様々な分野で活躍