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2022.11.16
and Vetに在籍し、遠隔でお仕事をするメンバーの1人です。
前回に引き続きタイの獣医療事情をリポートしていただきます。
それでは、お願いします。
はい、みなさんこんにちは
紹介にあずかりました獣医師の佐藤龍之介です。
私は2022年の4月より世界一周の旅に出ています。
一度大動物獣医師の仕事を退職して、現在はアジアを中心に旅をしています。
そしてand Vetさんから遠隔でお仕事を頂きながら、獣医師として仕事をしております。
つまりフリーランスの獣医師として診療以外で働いているというわけです。
世界の獣医師事情や動物の環境などをみなさんにシェアしていきます。
よろしくお願いします。
目次
タイの獣医療の歴史は?
タイのバッファロー市場、食用ではない!?#タイのバッファロー市場、食用ではない!?
バッファローの診療と手術
少し間が空いてしまいました。
タイの獣医師事情や動物業界のことについて、第2弾です!
僕が自分の目で見てきたこ とをみなさんにシェアしたいと思います!
第1弾はこちらから
タイにおいて獣医療が始まっての歴史は思っていた以上に長かったですが、それに対する制度というのは、まだまだこれからなんだろうなと思います。
ちなみにタイの獣医学部も6年間あり、大学も12大学あります。
国家試験も最近導入されたそう です。
大動物関連でいえば、日本のNOSAIのような制度はもちろんありません。
日本のNOSAI制度は、農家さんそれぞれが掛け金を払い保険に加入します。 そして家畜が病気になった場合には保険適用で医療が受けられ、家畜が死んでしまった場合には 保険金が支払われるというシステムです。
しかし、タイにはそのシステムがないので、治療する場合は全額負担です。
また家畜が死んでしまった場合の保険金の支払いもありません。
タイでは至る所でバッファローが飼育されており、これがものすごい価値を生み出しています。
例えば、日本では乳牛と肉牛がほとんどですよね。
乳牛は乳を出すことでお金を生み出します。
確かにお肉も市場に出回りますが、その価値は対して高くはありません。
数十万円がいいところです。
肉牛も子牛で70~80万円、出荷される牛でも100万円くらいがいいところです。
なので多頭飼いをして利益を出すというスタイルが一般的です。
でもタイのバッファローは、これの比ではありませんでした。
これは、私がとある農家の方とご一緒しているときのお話です。
なんととある市場で、バッファローに数百万バーツの値段がついたというニュースが流れたそうです。
1バーツが現在では3.8円ですから、バッファロー1頭で何百万円の値段がついたということで す。
しかもこれタイですからね!
その価値はとんでもないことになります。
また、過去には数千万円の値段がついたことがあるそうです。
馬ならまだわかりますが、これはあくまで牛の話。
いかにすごい世界かわかると思います。
もはや高級車以上に価値があるということです。
しかし、バッファローは乳に価値があるわけでもなく、肉に需要があるわけでもないので、富裕層の人が観賞用などに買うのだそう。
あまり理解できない世界ですが、つまりタイの牛飼いの人にとってバッファローはいくら治療費がかかっても治してほしい対象ということです。
とは言え、カナムさんのように日本に留学にも来て、相当高いレベルで技術や知識を身につけた人は、タイにはまだまだ少ないです。
なので全員が全員手術ができるわけでもないですし、例えば食欲不振の牛に対して抗生物質を打つだけという治療しかできないという場合もあるようです。
日本ならどの診療所にも血液検査のマシンだったり、顕微鏡、検査キットなどが充実しており、 診療所によってはポータブルのレントゲン装置や超音波装置もあったりします。
これによってより多角的に診断を下すことができ、ただの食欲不振という漠然とした症例から、 より細分化された診断を下せます。
しかし、それは日本での話でタイでは大学のラボでもなければ血液検査も行えませんし、ましてレントゲンを撮ることもままなりません。
なので、どうしても治療が一辺倒になってしまいがちなようです。
これが大動物分野におけるタイの獣医療の現状なのかなと感じました。
佐藤先生ありがとうございます。
タイにおけるバッファローの位置づけは知りえないところでした。
世界を旅してようやく気付けるところですね。
大動物(産業動物)の診療医をしていらっしゃった佐藤先生にはもどかしさを感じる部分だったかと思います。
実際に、バッファローの診療や手術はどのようなものでしたか?
私が今回1日密着したカナムさんは、普段は国の機関である、DLD(Department of Livestock Development)というところで働いています。
私が密着した日は、たまたま休日だったのですが、副業としてバッファローの手術をやるとのこ とでした。
日本では獣医師が副業で手術をすることはかなりレアですよね。
なぜなら基本的には動物病院だったり、NOSAIだったり、公務員としてとど府県に属するのが普通ですから、そういう業務は仕事内でやりますし、休みの日は当然ですが休みます。
個人的に何か仕事をするということはありませんね。
しかしカナムさん曰く、タイでは獣医師の給料は高くないので、このように副業として治療や手術をしているとのことでした。
前述の通り、タイではNOSAIのような制度はないので、特に治療に関してのめんどくさいお金の制度もありません。
もし手術をする場合には、カナムさんと農家さんで直接の金銭のやり取りが行われています。
これは組織に所属し、しかもNOSAIのような保険制度が導入されている日本ではアウトとされているので、これもまた衝撃的なことでした。どっちがいいかは分かりませんが、副業で手術をするというのは異文化で驚きました。
そして手術内容ですが、臍ヘルニアの手術でした。
これは日本でもかなり一般的なオペですね。
臍ヘルニアとは、いわゆるデベソのことで、へその部分に本来はないはずの隙間ができて、そこから胃や腸が飛び出してきている病気です。
手術は無事成功し、牛は問題なく回復していきそうです。
ちなみにタイの獣医さんに密着した動画のリンクを貼っておきますね。
余談ですが、タイでは獣医師免許が必須ではないというと語弊があるのですが、日本ほど厳密に必要とされないとのこと。
なので、時として獣医師でない人が獣医師のように振る舞うことがあったり、そうしなくてはならない場面があるらしいのです。
今回話を聞いたカナムさんは、その説明をするときに「Sometimes people have to pretend veterinary」と言っていました。
実際に産業動物臨床医として活躍されていた佐藤先生だからこそ感じることも多かったかと思います。
挑戦したという思いも持ったのではないでしょうか。
日本で働く獣医師にとってはとても新鮮な内容でした。
business的にも進出できそうなところは多そうですね。
自分もぜひ、小動物の臨床現場に足を運んでみたいものです。
Part3も楽しみにしています。